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7話
「いぬ、じゃない…京井さん?手空いてたら、ちょっと来てくれへんか?」
片車輪に呼ばれた京井は、キッチンに居たが後を任せると手を洗って、エプロンで拭きながらやってきた。
「見てみぃ…これ」
むつの手を取り、怪我の具合を見て京井は険しい表情となった。だが、それは一瞬の事だった。
「あぁ…痛そうな…軟膏つけてからガーゼでおおった方が良さそうですね。手伝いますよ」
余計な事は言わずに、京井は傷を消毒して、軟膏をたっぷりと塗り付けるとすぬにガーゼでおおった。包帯を巻くのは片車輪の任せて、もう片方の手首にも同じ様に手当てをした。
「むぅちゃん、痛くないですか?」
「大丈夫、です」
「偉いなぁ。こんなん、痛いのによぉ我慢した、偉い偉い」
包帯を巻き終えると、片車輪が大きな手でむつの頭をわしわしと撫でた。むつは力強く撫でられ、ぐらぐらと身体を揺らしている。
「さ、ご飯にしましょうか。むぅちゃんはお薬飲まないといけませんからね」
消毒液などを片付けて、京井はキッチンに戻っていくと、作った料理を次々とテーブルに並べ始めた。