7話
こさめと共に風呂に入ったむつは、真っ赤な顔をして、ふらふらと出てきた。すでにリビングでくつろいでいた冬四郎たちは、ぎょっとしてむつに駆け寄った。
「ごめんなさーい。お湯熱かったみたいで」
バスタオルを頭に乗せて一緒に戻ってきたこさめは、けろっとしている。むつは完全に逆上せてしまっているのか、冬四郎の腕に掴まりぐったりとしている。
「汗かいたら熱も下がると思ったんだけど…むつ、大丈夫?お水持ってくるから横になってて」
冬四郎はソファーにいた片車輪を隅に寄せると、その太ももの上にむつの頭を乗せるようにして横にさせた。真っ赤な顔をして、ふぅふぅと息をついているが、髪の毛はしっかりと乾かしてきたようだった。
「可哀想やな…猫は寒がりやしな、それに付き合ってこんな目におうたんやな」
片車輪は分厚い手のひらを団扇がわりにするように、むつの顔に風を送っていた。
「…暑い」
喘ぐようにむつは言い目を閉じている。キッチンの方からは、こさめが篠田に叱られている声がしていた。
「まぁ…悪気はなかったと思うで?ねぇちゃんが寒なったら、あかんと思ったんやと思うでな。許したってな」
返事をするのも億劫なのか、むつはこくっと頷いた。病院でも着ていたルームウェアのジッパーを下げて、胸元を大きく開けると扇ぐようにして身体に風を送っている。
「ねぇちゃん…あとで、着替えや?汗かいてんやから、服が冷たくなってまた熱上がるでな」
「…はぁい」