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1話
「1つ、試してみませんか?」
冬四郎はそう言うと、京井の側に行った。そして、小声で何かを囁いた。京井は、こくりと頷いた。
「なら…山上さん、篠田さんと西原君と先に戻っててくれますか?俺は2人と少し別行動します」
「何をするんだ?」
「京井さんに臭いで追ってもらいます」
「時間が経過してるのでどこまで出来るか分かりませんが…それに、囮にもなるかもしれません」
「兄貴からのデータ。山上さんのパソコンに送るように言ってありますから、見といてください」
そう言い残すと、冬四郎は車の鍵を山上に渡した。そして京井の後を片車輪と一緒に追っていった。山上は頭をかきながら溜め息を吐いた。
「勝手に動くのが好きな兄弟だな、まったく。それに、囮はやるなって話した矢先じゃねぇかよ」
「山上さん?」
「晃からデータ届くから、そっちの確認をするぞ。あいつらは…聞き込みに行った」
「凄く変な組み合わせで大丈夫でしょうか?片車輪は…人だとしても、まぁ怖い見た目ですけど」
西原が心配しそうに、冬四郎の後ろ姿を見送っていた。山上もこれは、うーんと唸るしかなかった。




