7話
むつの言葉に、京井が足を止めると、むつは消え入りそうな声で、ごめんなさいと言った。
「…そう視えますか?」
「…はい…京井さんは犬でこさめさんは猫…片車輪さんは…おっきい輪っかみたいな…そんな風に」
「むぅちゃん、それ誰にも言わないでくださいね」
立ち止まったまま、京井がむつの顔を見て真剣に言うとむつは、びくびくとしながら頷いた。
「あ…ごめんなさい。怖がらせるつもりは無かったんですよ。むぅちゃんの言った通りなんです。私は…人ではありませんから。こんな私が…怖いですか?」
「怖くは…ないです。京井さん、何だか…お兄さんとは違うけど…」
何と言ったらいいのか、言葉が見付からないといった様子で、むつは首を傾げている。悩みながら、一生懸命に話そうとしているむつを可愛らしく思い、京井は背中に回していた手で、むつの頭を撫でた。
「えっと…あの、好きです」
「………」
今度は、京井が言葉に詰まる番だった。面と向かって、それも真剣な様子で、純粋に好きだと言われた事に対して京井は、何とも言えない心地になっていた。
「…私も、むぅちゃんが大好きですよ。でもね、むぅちゃん。好きってあんまり言ってはいけませんよ?勘違いする人も出てきます」
注意をしながら、京井の勘違いする人には真っ先に、西原が思い浮かんでいた。
「さ、帰りましょう。そろそろ暗くなってきてますし…また窓から入りますか?お兄さんに気付かれてないと良いんですけどね」