7話
「きょ、京井さんっ…」
むつは怖がるように、ぎゅっと鈴を握りしめたまま京井にしがみついていた。京井はむつを抱き締めるようにしながら、鈴の音に耳を澄ませているしかなかった。
「…っ、何かに反応してるようですね」
京井は落ち着いた物で、むつを抱き上げたまま鈴が鳴り止むのを待っていた。しばらくは、森の中に鈴の音が反響し続けていたが、ぴたっと鳴りやんだ。
「むぅちゃん…大丈夫ですか?」
「…はい…でも、何で…」
「分かりませんが…むぅちゃんは、この鈴、どう思いますか?」
握りしめていた手を、そろそろと開いて小さな鈴を見つめたむつは、京井の質問の意味が分からないのか、首を傾げている。
「嫌な感じとか、何か…どんな事でもいいんですが…感じる事ってありますか?」
「…嫌な感じは、ないです…けど」
「けど?」
むつは言葉を切ると悩むように、鈴を見ていた。京井は、そのむつの横顔をじっと見ている。
「何か…あるとほっとするというか…でも、誰の何ですか?私が持ってても、良いのでしょうか」
「そうですか…誰のでしょうね?でも、むぅちゃんに持っていて欲しいと思ったのでしょうね」
京井の言葉をゆっくりと反復し、むつはそっと鈴を指先で触ってちりんと鳴らしてみせた。今度は反響もせずに、すぐに静かになった。
「大切に持っていてあげてくださいね」
「…はい」




