7話
見渡した部屋は、もちろん見覚えのない部屋だった。木目がそのままになっている壁に床。小窓の前に机があり、クローゼットがあるだけで、あとはむつが寝ていたベッドがあるだけだった。むつは小窓のカーテンを開けて、窓を開けた。外からひんやりと冷たい空気が流れ込んでくると、汗が一気に冷やされて寒気がした。だが、澄みわたるような空気は心地よいものだった。
とんとんっとノックされ、ドアが遠慮がちに開いた。冬四郎が、マグカップを持って入ってきた。起きていたむつに笑いかけ、マグカップを差し出すと隣に立って窓から外を見た。
「良い所だろ?山に囲まれてるからな…不便な場所だけど、静かだし」
「…そうですね」
マグカップを受け取ったむつは、ふぅふぅと冷ましながら一口飲んだ。
「落ち着いたら、下に下りてきなさい。みんな、来てるから」
「みんな、ですか?」
「あぁ、篠田さんたちも湯野さんたちも来てる。勿論、西原君も居るからな」
西原の名前が出ると、うつ向いたむつだったが、恥ずかしがっているのか耳がほんのりと赤くなっていた。
「…じゃあ、後でな」
むつは、こくりと頷いた。冬四郎はそれを見て、他には余計な事も言わずに部屋から出ていった。