7話
「…つ、むつ…」
冬四郎に揺り動かされ、むつは目を開けた。車の助手席に座っていたはずだったが、いつの間にか寝かされている事に気付き、むつはばっと飛び起きた。
「お、おぉ…びっくりした」
目を大きく開けて冬四郎も驚いていたが、むつも同じように驚いている。
「悪い。起きないから山上さんの所に直接来たんだ…けど…大丈夫か?」
はぁはぁとむつは息をつきながら、胸元を押さえている。額はびっしょりと汗に濡れていた。話せないほどに、肩を上下させていたむつだったが、こくっと微かに頷いて見せた。
「少し、横になりなさい」
冬四郎に言われても、むつは横にはなろうとせずに、ぎゅっと服を握り締めていた。もぞっと布団を引き上げ、むつは額の汗を拭った。
「何か温かい物持ってくるから」
そう言って冬四郎が出ていくと、むつは閉まったドアに見ていた。そして、少し呼吸が落ち着いてくると、こてんっと横になった。胸元から下ろした手の先で、ちりんっと鈴が軽やかな音を立てた。むつは鈴の方に、視線を向けると指先で、鈴を弾いて鳴らした。りんっと涼やかな音が響くと、何だか落ち着くようだった。
「…これ…誰のなんだろ」
しばらく、むつは鈴を見ていたがむくっと起き上がった。呼吸も落ち着き、胸の痛みのような物も消えていった。