7話
「まぁ事務職だな」
実際、経理などもまともて行っているから嘘ではないなと、冬四郎は自分に言い聞かせるようにしていた。今、記憶が戻らない状態で妖がなどと言っても余計に、混乱させそうだと思う半面、このまま関わらずに居てくれたらなと、思わないでもなかった。
むつは、そうですかと答えただけで後は黙ってしまっていた。事務職をしていたという、実感がないから仕方のない事なのかもしれない。
京井が鞄を持ってやってくると、冬四郎は何となくほっとしていた。そこには、やはりこれ以上むつのしていた仕事に関して、むつから聞かれたくなかったからなのかもしらない。
「さて、あとは俺の着替えを取りに行って、軽く昼飯食って…山上さんの所だな」
冬四郎はそう言うと、タバコを吸いながら今度は自分の自宅のある方向に車を走らせた。
少し窓を開けているから、車内はひんやりとした風が入ってきて寒いが、むつはいつの間にか揺れに合わせるようにして、うとうとしている。朝に飲んだ薬が効いてきているのか、すぐに寝息を立て始めた。冬四郎はココアをそっと手から引き抜き、後ろに置いていたジャケットを京井に取って貰うとむつにかけた。




