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7話
そんなに多くはない荷物を持ち、昼前には病院を出た3人は冬四郎の車に揺られていた。
「…タバコ買いに寄っても良いですか?」
運転をしながら、沈黙に耐えかねたのか冬四郎が言うと、むつも京井もこくっと頷いた。近くのコンビニで車を止めると、冬四郎はすぐに戻るからと降りて行った。むつは冬四郎が降りて、コンビニに入っていくのを、目で追ってみていた。すぐに買い物を済ませ、電話をしながら冬四郎は戻ってきた。車に乗り込むと同時くらいに通話を終えたのか、ポケットに携帯を落とし入れ、ビニール袋をむつの膝に置いた。
「山上さんの所に行く前に、着替えを取りに行くけど…京井さんはどうしますか?着替え取りに行くなら、寄りますよ?」
「そう、ですね…お願いします」
「むつは…それともこもこしたので我慢しろな」
首を傾げながらも、むつは頷いた。
「とりあえず、京井さん家から行きましょうか。場所はどこですか?」
「住所は…」
冬四郎と京井が話をしている間、むつはぼんやりと外を眺めて待っていた。日差しはあるが、風が強く上空を流れる雲で時折、暗くなる。そんな天気だった。