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6話
むつの腕を首に巻き付けたまま、朝を迎えた京井は、たったの一晩でげっそりと疲れた顔になっていた。だが、むつは少しだけだが、顔色が良さそうだった。
「…ありがとうございます」
冬四郎は笑いを堪えるように京井に言うと、京井はむぅちゃんの為ならと苦笑いを浮かべていた。
目を覚ましたむつは、ベッドの中で伸びをしたりして、もぞもぞしていたが目を擦りながらゆっくり起き上がった。昨日に比べると、顔色はだいぶ良いようだ。
「おはよう、むつ。よく眠れたか?」
大きな欠伸をしていたむつは、冬四郎の声に反応するように、ぱっと口元に手を当てて欠伸を隠した。そして、少し布団を引き上げてから、こくりと頷いた。だが、ちらっと冬四郎の顔を見るように少しだけ顔を上げた。
「お、おはようございます…」
「顔色良さそうだな。気分は?悪くないか?」
「…はっ、はい」
昨日までは話し掛けても、頷くか首を傾げる程度だったが、今朝は言葉を発しようと一生懸命になっている様子がみえる。声は小さいし、うつ向き加減な所は昨日と変わりないが、良い兆候な気がしていた。