6話
ナースコールを押してすぐに、藤原がやってくると、むつの熱を再度計ったり、口を開けさせて喉を診たり、血圧を計ったりしていた。看護師が来てするのではなく、藤原が直接する辺り西原の言った事を気にかけてくれている証拠なのだろう。
「熱は高いですが、扁桃腺も腫れてませんし、血圧も以上ないのでこのまま検査しちゃいましょうか。良いですか?」
藤原は冬四郎に聞くのではなく、むつに聞くと、むつは渋い顔をしたものの、頷いた。むつの仏頂面に、藤原は苦笑いしたものの、特に何も言わずに行きましょうかと、むつを促した。握り締めていたジャケットの置き、むつはスリッパをはいて冬四郎に付き添われて検査室に向かっていく。冬四郎は検査室まで入る事は出来ない。廊下で待っていると言うと、むつはまたうつ向いた。
「…すぐ終わりますから、大丈夫ですよ。お兄さんには、ここで待ってて貰って…と、ん?それ…鈴ですか?持ち込めないので、お兄さんに預かって貰ってくださいね」
仕方なさそうに、むつは右手を冬四郎の前に差し出した。小指に結びつけてある鈴を冬四郎が外すと、むつは寂しそうに小指を見ていた。
「無くさないで持っててやるから。早く行って、早く帰ってきなさい」
冬四郎に背中を押されるようにして、むつは藤原と一緒に検査室に入っていった。