6話
京井とこさめにむつを任せているからと、冬四郎と西原は病院の外に出てタバコをゆっくり吸ってから、病室に戻ってきた。あまり眠れなかったのか、むつはすでに起きていた。
「起きてたのか?」
むつは不機嫌そうに、こくっと頷いただけだった。どうしたのかと、冬四郎が京井の方を向くと、近寄ってきた京井がこっそりと耳打ちをした。どうやら、嫌な夢でも見たようで、うなされていたのをこさめに起こして貰ったようだった。むつを起こしたという事で、こさめも篠田に怒られたのか、こちらも不機嫌そうにしている。
「むつ、さっき病院の先生が来られて、検査をすぐにしようって話だったんだけど…出来そうか?」
「………」
「もし、気分が悪いとかあるなら明日にして貰ってもいいと思うけど、どうする?」
冬四郎が置いていったジャケットの袖を握り締めたまま、むつは冬四郎を見上げてまたうつむいた。
「…一緒に行くから検査受けてくれるか?早く終われば退院しても良いって先生が言ってたぞ」
ベッドを腰を下ろした冬四郎が言うと、むつは渋々といった感じで頷いた。そして、そのまま前のめりになるようにして、冬四郎の肩に額を押し付けた。冬四郎はナースコールを押してから、むつの頭を撫でていた。不機嫌そうだったむつは、だんだんとほっとしたような顔付きになっていった。