6話
「そうではないんですが…朝方、暴れたりしたものですから、長く入院となると…」
「あーそうですね。病院壊れそうですもんね。検査次第で治療が必要でなければ退院しても構いませんよ」
むつの能力を知っているだけに、藤原は驚く様子も見せずに、病院壊れるかぁ怪獣ですね、と暢気に笑っている。冬四郎は何とも言えずに、笑うだけだったが、やはり能力の事を知っている病院に早く移して正解だったなと思っていた。
「…と何かご質問ありますか?」
「いえ、私は今の所は大丈夫です」
「あ、良いですか?質問ではないんですが、むつの事はくれぐれも口外なさらないように。例え、警察が来たとしても話さないで貰いたいんです」
「分かりました。ま、むつさん死んだ事になってますしね。カルテは僕が個人で管理しますから」
西原が言うと、藤原は何も聞かずに了承してくれた。だが、カルテを個人で管理するというのは大丈夫だろうかと西原は少し不安に思っていた。
「…いや、何が起こるか分かりませんから、カルテは破棄して貰えますか?」
「うーん…破棄ですか…それはちょっと色々、病院として問題が起きそうですね…うーん、まぁいっか。良いですよ、分かりました。けど、検査結果の保管もしなくてはいけませんから…退院時にお兄さんにお渡しします。全部。で、諸々の処理が済んだのちお兄さん立ち会いの場で処分という形でも宜しいですか?」
何が起きているのか分かってはいない藤原だったが、むつの先輩であり、自分の先輩でもある西原です疑いもせずに、そう言ってくれた。
「えぇ、勿論です。お手数おかけしますが、よろしくお願いします」