6話
「えっと、ですね…先ず、川の水を飲んでいる可能性がある事から胃の洗浄をして調べた結果、細菌感染は診られないようです。で、こちらでは嘔吐物の検査を取り急ぎしましたが、やはり感染は大丈夫です。吐いたのは車酔いか、水分の摂取に対して胃が受け付けなかった物と思われます。胃液も薄いですし、胃が弱ってる物と診られます。血液検査の方では少し問題が…薬物反応が出てますね。何か分かりませんので、それはこちらで今、詳細を検査しておりますので」
薬物反応と聞き、冬四郎と西原がちらっと顔を見合わせた。仮面の男リンも薬を使って、と言っていたがそれは本当の事のようだった。
「ただ、その薬物に関してですが…かなりの回数、打たれた形跡があります。先程、簡単な診察はしましたが両腕に痕が残ってましたので、短期間で何度もという事になりますね。それから、記憶の混乱に関しては、まだ起きてる状態で診てませんから何とも言えませんので…起き次第、検査してみましょう。今日の夕方にでも。顔以外には打撲のような痕もありますから、全身の検査はしておいた方が良いと思います。と、もう1つ。熱高いですね。今、計ったので40℃越えてますから、点滴と熱冷まし出しますので必ず飲ませてください」
藤原は淡々と報告しながら、持っていたコルクボードに挟んである紙をぺらっとめくったりしている。
「まぁ、こんな物ですかね。今の所は…あ、もし、もしもですよ、むつさんがお腹空いたって言っても、何も与えないでくださいよ。水分は許可しますが、ジュース、コーヒーなど刺激物はダメです。良いですね?」
「分かりました。それで、検査結果って早くてどのくらいで出ますか?」
「血液の方は頑張って、明日…夕方かな?他のもそのくらいになると思います。むつさん、もう帰りたいとか言い出してますか?」
病院嫌いが半端でないむつを知っている藤原が、困ったように言うと、冬四郎はゆるく首を振った。