6話
「みや…少しくらい財布に中身入れとけな。何かあった時にすぐ使えないと困るからな」
「…はい」
山上に笑いながら言われ、冬四郎は恥ずかしそうに返事をした。少しだが、和やかな空気が流れていた。
「あの、それで…篠田さんは何でまたこちらに戻ってこられたのでしょうか」
照れ隠しをするように冬四郎が切り出すと、篠田はすぐに笑みをしまった。山上が、この場に警察関係者だけを残したからには、それなりの理由があるはずだった。
「山上さんに頼まれましてね。調べてたんですよ…むつさんを連れ去ったやつらが組織として成り立ってるのかを」
いつもの口調ながらも、目は細められ何やら険しい目元になっていた。だが、さらっと言ったからには何か掴めた事があったのだろう。ところが、篠田はふっと自嘲めいた笑みを口元に浮かべた。
「結果としては、さっぱりでしたよ。ただ、まぁ…変な事件は何件もありました。店の店員が殺されたで通報受けて行ったら、人が狸と入れ替わってたり、山上さんが写真で送ってくれたナイフが物証として保管してあったはずが無くなってたり…」
「組織としてはある可能性が高いな。表に出てこないってだけで」