6話
「こさめさんはりきってるからな。任せておけば大丈夫だろうな」
山上がくっくっくと笑いながら言うと、篠田は苦い顔をしてゆるゆると首を振った。
「…むつの為に、わざわざ?」
冬四郎が驚いたような顔をすると、篠田は真顔に戻るとそうじゃないと首を振った。
「いや、まぁ…こさめはむつさんの為に来たいって言ってついて来たんですけどね」
こさめは、と言ったという事は、篠田は篠田の用事で来たという事になる。だが、篠田はすぐには話そうとはしない。山上が尻を浮かせてごそごそとポケットをまさぐり、財布を取り出した。
「湯野ちゃん、ちょっと頼まれてくれるか?こさめさんが、言ってたろ?むつにショーパンはかせるなって…だから、服をもう少しと、何か必要なもん。俺らじゃ気付けなかったもので足りない物、揃えてやってくれ。祐斗と荷物持ちに片車輪連れて行けばいいから」
買い物を行かせるのだと分かると、冬四郎が慌てて財布を取り出していた。
「宮前さん、財布の中身ないっすよね?」
「あ…」
西原に突っ込みを入れられると、冬四郎は恥ずかしそうに財布をしまった。
「あの…請求してください」
「レシート持ってきてくれな」
山上が笑いながら、颯介に財布を渡した。颯介は受け取ると、祐斗と片車輪と一緒に出ていった。