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6話
ドアの閉まる音がし室内が静かになると、むつは西原にキスされた額をそっと撫でていた。
「…顔、真っ赤だぞ?」
「う…だって…」
「けど、嫌じゃなかったみたいだな」
意地悪そうに冬四郎に言われると、むつは耳まで真っ赤にさせていた。西原にキスをされた事を、嫌がるどころか恥ずかしくて仕方ないという様子のむつを冬四郎は微笑ましく見ていた。
「寝るまでは居てやるから…目閉じなさい」
「…寝たら…どっか行くんですか?」
「え?着替えを取りに行ってくるかな。何だ…人が居ると緊張するくせに、居ないと寂しいのか?」
むつがこくりと頷くと、冬四郎はむつの頭をゆっくり撫でながら、すぐに戻ってくるよ、と言った。
「だから、安心して寝なさい。病室には常に誰かが居るようにしておくから」
「誰が…」
「居るのかって?誰が良い?西原君?」
むつは伏し目がちのまま、ゆるゆると首を横に振った。だが、誰が良いとも言わずに目を閉じた。冬四郎に頭を撫でられているうちに心地よくなってきたのか、顔の赤みもひいていきうとうとしてきたようだった。