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6話
ぶにっと頬を潰されるようにして、むつは顔を上げさせられた。
「あんまり、下ばっかり見るもんじゃない」
「…ふぁい」
もごもごと返事をして、むつはついでのように大きな欠伸をした。目尻に浮かんだ涙を西原が拭うと、むつは恥ずかしそうにうつ向いて、冬四郎の背中に隠れるようにして身を引いた。
「…眠いか?」
「ちょっと…眠いです」
「なら、少し寝た方が良いな。横になりなさい」
冬四郎に言われると、むつはもぞもぞと布団に潜り込んだ。そして、またふぁふぁと欠伸をした。冬四郎がちらっと西原に目配せさると、西原は頷いて立ち上がった。
「むつ、ゆっくり寝ろよ。起きたらまた…来ても良いか?」
鼻の上まで布団を引き上げていたむつは、西原の顔をまじまじと見てから、こくりと頷いた。
「良かった。そん時は何か差し入れ持ってくるからな、熱下げとけよ?おやすみ」
ちゅっとむつの額に唇を押し当てた西原は、何事もなかったかのようにこさめを立たせ、他の面々も促して外に出ていった。