6話
足が冷えるだの何だのと言われ、むつはベッドに座らされ足元には布団をかけられた。普段であれば言う事など聞かないはずだが、今は素直に言われた通りにしている。
「扱いやすい…」
冬四郎が本音を漏らすと、篠田と山上がくすくすと笑っていた。普段それだけ、苦労をしているという事なのだろう。むつは首を傾げながら、冬四郎を見上げている。
「さて…むつ。何か思い出せたって感じもしないみたいだな…?」
病室内の椅子には限りがあり、冬四郎、こさめは当然のようにベッドに腰かけている。椅子には山上、篠田が座っており、颯介、祐斗、西原、京井、片車輪はそれぞれ壁に寄り掛かったりして立っている。ベッドに座っている冬四郎に、顔を覗きこまれながら聞かれると、むつはうつ向き加減に頷いた。
「あ、いや…ごめんな。責めてるわけじゃないんだよ。今は、何も考えないでゆっくりして欲しいしな」
冬四郎に頭を撫でられると、むつは甘えるようにして冬四郎にすり寄った。むつが、くしゃっと顔を歪めて泣き出しそうになると、冬四郎はむつの肩に腕を回して引き寄せるともたれ掛からせた。
「むつ。ここに居る人は、みんなむつの事をよく分かってる人たちばかりだから大丈夫だから、な?先ずは熱が下がるようにしないとな」
「うん…」
壁際に立っていた西原は何を思ったのか、つかつかとベッドに寄ると両手でむつの頬を挟んだ。