1話
「むっちゃん…ここで…」
京井はそこまで言いかけて、口を閉じた。冬四郎がそれを気にして、続きを聞きたそうに促した。
「たぶん、ですよ…頭を水につけられたんじゃないかと思います。微かに香水と血の臭い、それにタバコの臭いが水に混ざってます。あと、むっちゃんじゃない…警察の人かも知れませんが1つ濃く臭いが残ってますね。体臭のきつい人か長くここに留まっていたか。そこまでは、私にも判断はつきませんね」
「拷問だな」
「えぇ…ここ、流れちゃったようですが血が少し残ってますよ。それに、そこの扉と壁部分にも。鑑識が調べたなら分かると思いますが、もがいた時にでもついたんでしょうね。手の後のような形ですよ」
京井は浴槽の内側の指差した。水で流されてしまったのか、うっすらと茶色っぽいものが残っている。壁や扉部分のは冬四郎には分からなかった。険しい表情で睨むようにして、浴槽を睨む冬四郎を心配そうに京井が見ていた。
「出血があったとして…命に関わる程の量ではないんですよね?」
「おそらく。排水口に流れたとしてもそしたら、臭いが残るはずですがほとんどありませんから…念入りに水を流されたとしたら消えかかっててもおかしくはありませんが」
「いや、それはないでしょう。こうして、浴槽に水を残してるんですから。念入りにするなら、水も抜いていくんじゃないかと思います」




