6話
ベッドを囲むようにして言い合いをしていると、むつがうぅんと唸りながら身動ぎをした。騒がしいせいで、目を覚ましそうなようだった。
「むつ?」
こさめが期待するように、声をかけ覗き込んだが京井が心配そうな顔をして、冬四郎と西原に目配せした。そんな些細なやり取りに、山上と篠田はすぐに気付いた。
「…何があった?」
山上に聞かれ、冬四郎が答えようとする前にむつがうっすらと目を開けてしまっていた。こさめと祐斗が嬉しそうな笑顔を見せていたが、むつはぼんやりとしているようで、瞬きを繰り返すだけだった。
「こさめ、ちょっと来なさい」
「祐斗君もちょっと」
篠田と颯介がそれぞれの保護者のように2人を呼んだ。2人は不満げな顔をしていたが、山上から来なさいと命令口調でもう1度言われると、大人しくベッドから離れた。2人がベッドから離れると代わりに、京井がむつに付き添う形になった。そんな京井を羨ましそうに、こさめと祐斗は見ていた。
「先に、言っておく事があります。むつは、記憶が混乱してるみたいで…私たちの事が分からないみたいなんです」
簡潔に冬四郎が言うと、山上と篠田は険しい顔をしたが、残りの4人はただ驚いたような顔をしていた。