1話
昨夜のような路上駐車はせずに、近くのコインパーキングに車を停めると冬四郎は門の前で待っていた西原たちと合流した。そして、門を開けドアをくぐっていった。むつの部屋の前は、もうテープもなにもなくいつもと変わりない様子だった。
鍵を開けて中に入ると、買い物袋や鞄、靴は昨日見た時のままで散乱している。冬四郎は簡単に靴を端に寄せて、買い物袋と鞄を拾い上げた。そして、がさっとキッチンに置いた。
「何ら変わりない気もしますが」
ぐるっと室内を見回した西原はそう呟いた。玄関先で何かしらあったと思わせる様子以外には、室内をぶっしょくしたような形跡はない。
「西原は室内みといてくれ。みや、京井さんと風呂場に行ってみてくれるか?篠田は俺と玄関片付けとくぞ」
普段なら有り得ないくらいにてきぱきと指示をgf山上に従って、西原はむつの寝室に入っていき、冬四郎と京井は風呂場に向かった。
「血の臭いがしますね…多くはないと思いますが」
京井がそう呟いた。冬四郎は風呂場に京井を連れていくと、バスマットのわずかな血痕を教えた。京井はちらっとそれを見てから、風呂場のドアを開けた。
「…ここで何かあったみたいですね。かなり濃い臭いがしますよ」
そう言いながら膝をついた。そして、すんすんと鼻を動かして臭いを嗅いでいる。風呂場全体の臭いをかぎ、そして水になっている浴槽に顔を近付けた。




