6話
ドアが閉まる前に、ばたばたと足音が聞こえてきた。どこからか、看護師の廊下は走らないで、と怒る声も聞こえてきていた。気になったのか篠田が、閉まりきる前のドアの隙間から廊下を見ると祐斗が見えた。
「子供が増えたよ」
篠田がくすっと笑いながら言うと、冬四郎もドアの隙間から廊下を見て、あぁと苦笑いを浮かべた。きょろきょろとしていた祐斗だったが、ドアから顔を覗かせている冬四郎と篠田に気付くと、ぱっと笑顔を見せた。ぱたぱたと駆け寄ってきた祐斗を病室に入れると、冬四郎と篠田は揃って呆れたような笑みを浮かべた。
「谷代君、廊下は静かに」
「走ったりしてると怒られるよ」
大人2人からやんわりと注意を受けた祐斗は、頭をかきながらすみませんと謝った。そして、奥の方を気にするようにちらちらと見ている。
「寝てるから、静かにな」
冬四郎が言うと、祐斗はこくこくと頷いてこさめの隣に立った。こさめと一緒になって、むつの顔を見ている。ほっとしたように、ずるずると床に座り込んでいた。
「てっきり、山上さんと一緒に来られるかと思ってましたが…別々だったんですね」
「途中までは一緒でしたよ。何か、買い物してくるとか言って…後から来るみたいな事を言ってたな。それで、宮前君はその絆創膏はどうしたの?」
篠田に指差され、冬四郎は絆創膏を押さえながら苦笑いを浮かべるしかなかった。
「むつが夜中に錯乱状態になりまして、暴れた時に引っ掛かれたんです」
「あー痴話喧嘩っぽいね」
西原にも同じ事を言われている冬四郎は、返事をすることなく笑うしかなかった。