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6話
「…しばらくは、様子見だな」
男はそう言うと、もう1度ちりんっと鈴を鳴らしてみせた。今度は反響せずに、すぐに鳴り止んだ。むつの小指に鈴を結んだままにし、男はむつの手を置くと布団をかけた。
「夜は気にかけてやってくれ」
「夜は?それはまた襲われるからか?」
「いや…その可能性もあるが、それより疲弊しきっているからな。水は飲ませるなよ、監禁されてる時は水だけの時が多かっただろうからな。嫌な気分にさせるかもしれない」
男はそう言うと、むつの寝顔を確認し急ぐように窓に近寄った。
「閉めとけよ」
西原に向かってそう言うと、入ってきた時と同じように窓から出ていった。西原が慌てて窓に駆け寄ったが、男の姿はもうどこにも見えなかった。
「4階なのに…」
呆気に取られたように言い、西原は窓を閉めるときちんと鍵もかけた。突然やってきて、さっさと居なくなった男に対してふぅと溜め息をついたが、むつが穏やかに眠れるようになったのなら、と西原はあまり気にしない事にした。