6話
「とにかく、用心は必要ですね。特に夜は…」
「そういう事ですね」
そう返事をした京井だったが、何か気になっている様子だった。冬四郎も西原も、何をそんなに気にしているのかを気になった。
「…本当は?山上さんたちが来る前に話したいって事は何か、京井さんの中での結論出てますよね?」
冬四郎が穏やかな声で聞くと、京井が申し訳なさそうな顔をした。
「この鈴、あの男がつけたんじゃないかと…普通の鈴じゃないと思いますし。あの時のあの気配は…」
「あの男?」
むっとしたような表情の冬四郎は、京井の言う男が、どの男なのか分かっているようだが、西原はさっぱり分からないという顔をしていた。
「リンとか言う…」
「あ、あぁ…変な仮面の。あーはいはい。それが、むつの小指に鈴?何か女々しい上にストーカーみたいに何処にでも現れますねぇ」
「悪かったな」
3人の後ろから声がし、ぎょっとしたように振り向くと少し開いた窓の外に、その男が居た。
「いつの間に…」
「むつが運びこまれる少し前に。部屋まで特定出来たからな…様子を見ようと思ってな」
窓に近寄った西原は、からからと窓を開けると男を中に入れてやった。
「…忍者かよ」
相変わらず仮面で顔を隠している男、リンはふんっと笑っただけで何も言わなかった。