6話
手招きをされ、冬四郎と西原は京井が居る方に回り込んだ。すると京井は、布団を少し持ち上げて、むつの手を取った。ちりんっと音がした。
「何ですか?それ…」
「鈴です。少し…市販の物とは違う気がします」
「って言うと?と、いうより…いつからこんな物を付けてたんですか?」
冬四郎が驚いたように言いながら、むつの小指に織紐で結ばれた小さな鈴を、指先で転がすように触った。控えめだが、しっかりと響く音だった。
「病室に居る時からだって、隊員の方は言ってました」
「…京井さんは知ってましたか?」
「いえ、音もしなかったので全く。救急車の中で、気付きました」
「そうですか…搬送前に誰かがつけたって事ですよね?けど、いつの間に…」
「むぅちゃんが暴れた時には、ついてませんでしたよね?ですので…暴れた後、処置の最中にって事だと思います」
冬四郎はむつの手を布団の中に戻した。
「…最後に1人、医者が出てきたの覚えてますか?処置で入った医者は1人だったはずですが…たぶん、最後の1人は病院関係者じゃなかったと思います」
「すでに、敵はすぐ側で見張ってるという事ですか?」
冬四郎が聞くと、京井は首を傾げた。そこまでは言い切れないが、可能性はあるという事だろう。