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6話
血色は悪いが、頬は赤く火照っている。点滴の針を刺す前に、採血も済ませると、藤原はすぐに出ていった。冬四郎からある程度は聞いているのか、あれこれ聞いたりはしてこなかった。ただ、医者としてするべき事をしているようだった。
「…まぁずぶ濡れで居たら、風邪もひくな」
「でしょうね。次から次へと忙しいですね」
冬四郎と西原は呆れたような顔をしていた。ベッドで寝ているむつは、苦しげにはぁと息をついている。
「じゃあ…俺、着替え用意しに行ってきますよ」
「あ、待て。篠田さんがこさめさんと一緒にこっちに向かってるから、こさめさん連れて行ってくれ。下着選びは、女の人に任せた方がいいだろ」
「篠田さん戻ってくるんですか?」
「あぁ。山上さんたちもこっちに向かってる」
「なら、警護の方は大丈夫ですね」
病院を移し、出入りもしやすく、むつの事を分かっている場所であれば何が起きたとしても、色々と都合がいい。早めに移して良かったと、西原が言うと冬四郎も頷いた。
「あの、ちょっといいですか?先にお話ししておきたい事が…」
むつの側に居た京井が、改まったように2人に声をかけた。