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6話
最初は西原に寄りかかっていたむつだったが、京井の方が背も高く、がっしりとしていて安定性があるからか、いつの間にか京井に寄り掛かっていた。京井もむつが揺れで、椅子から落ちたりしないように腕を回していた。西原は、面白くなさそうな顔をしていたが、京井はそれに気付かないふりをしていた。
ようやく、藤原病院に着くと毛布で包んだまま京井がむつを抱いて下ろした。むつは起きる気配もなく、くったりと京井の腕に身体を預けている。先に着いていた冬四郎とむつの後輩の医者が、ストレッチャーではなく京井の手で運ばれてくるむつを驚いたように見ていた。
「何か…あったのか?」
「たぶん車酔いでゲロったのと熱が」
西原が答えると冬四郎は、あぁと言った。藤原は隊員から話を聞いていた。送り届けるだけで、隊員はすぐに帰っていった。
京井は看護師に案内され、用意されていた病室にむつを運び寝かせた。熱があると聞かされていたからか、すぐに体温計で熱を測り直されたり、点滴の用意がされたりしている。