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6話
「酔ったんですか?」
隊員が声をかけると、むつは首を傾げた。そして、ついでのようにくしゃみをした。ずっと鼻をすすり、寒そうに腕を擦っている。隊員が手を伸ばして、むつの額を触った。
「熱がありますね…風邪かな?」
体温計を出そうとしている間に、むつはするっとストレッチャーから降りると、西原と京井の間に身体を無理矢理ねじこんで座った。
「あ…もう…熱測ってくださいよ」
差し出された体温計を西原が受け取り、むつに渡すと大人しく脇の下に挟んだ。顔色は悪いが、夜中のようにおどおどした様子は見られない。ピピッと体温計が鳴ると、むつは西原に見せた。
「あー熱あるな」
隊員に体温計を返し、西原はパーカーを脱いでむつに着せた。そして、ストレッチャーから毛布を引っ張ると身体に巻き付けると、膝を抱えた。
「横にならなくて良いのか?」
「いい、です…」
むすっとした様子で言うと、むつは目を閉じて膝の上に顎を置いた。曲がったりして車内が揺れても、みっちりと詰まったように西原と京井の間にいるむつはあまり揺れを感じないのか、また寝息をたて始めた。