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6話
こほっ咳き込んでいるむつは、身をよじるようにして、うつ伏せになり口元を手で押さえている。病室に居た時よりも、顔色が悪い。ごぱっと泡立ったような液体を吐き出した。
「っう…気持ち、悪…」
むつはそう呟いた。
「あ…車酔い?」
西原はむつの背中を擦っている。むつはまだえずいており、返事をする事も出来ない。隊員は落ち着いて、ストレッチャーの上を綺麗にしている。少量の水のような物を吐いただけで、あとは吐く物がないのか、ごほごほっと咳き込んでいる。
「むつ、横になるか?」
ストレッチャーに肘をついて、うつ伏せ気味のむつはゆるゆると頭を振った。そして、ゆっくりと起き上がるとむつはストレッチャーから降りようとしている。隊員が慌てて止めようとすると、諦めたようにちょこんと座った。