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6話
「病室に居る時からつけてましたよ、その鈴。特に問題もなので、そのままにしてあります」
京井が何を見ているのか、気付いた隊員がそう説明をした。お守りか何かですか?と聞かれると京井は、曖昧に頷いた。西原は何で鈴なんかが付けられているのかと、不思議そうな顔をしていた。
西原がむつの手を取って、まじまじと鈴を見ていると、小指に織紐で結ばれた小さな鈴が、ちりんっと控えめに鳴った。ひんやりと冷たい手が、これ以上冷えないようにと西原が手を置くと京井は毛布をかけ直してやった。そして腕を組み何やら考え込むような顔をしていた。やがて何やら、結論が出たのかふんっと不機嫌そうに息をつくとあとは、腕を組んだまま車の揺れに身体を預けていた。
車内は特に会話もなく、ただ対向車や人の声なんかが聞こえるだけだった。
「…っ、こほっ…けほっ」
突然ストレッチャーに寝かされていたむつが、こほっこほと咳き込んだ。ぱっと目を覚ましたむつは起き上がろうした。腹の所で、ゆるく固定してあったベルトを京井が咄嗟に引きちぎった。