6話
冬四郎と京井が溜め息を吐きながら、悩みは尽きないと話していると西原が戻ってきた。がたいの良さげな30代の男2人が、揃って溜め息を吐いているのを首を傾げて見ていた。
「…溜め息ばっかりついてる暇ないですよ。搬送には救急車を使う事で、話がつきましたから。京井さんと俺が同乗しますんで」
「え?」
納得したように冬四郎は頷いたが、京井は驚いたような顔をしていた。
「嫌でしたか?もし、むつが急に目を覚ましてまた…ってなった時に押さえられる人が必要ですから。お願いしますよ、俺は警察としてって事で」
「あ…そういう事ですね。分かりました」
「宮前さんは自走で。ついでに先に行って、むつの服とかを頼みたいんですけど…」
服や下着が必要なのは分かっているが、冬四郎はあからさまに嫌そうな顔をした。
「…そんな、あからさまに嫌がらなくても。じゃあ、俺が用意しますから」
そう言って西原は、にこにこしながら冬四郎に向かって、手のひらを差し出した。
「何だ、その手は」
「よーふく代っ‼」
威張ったように西原が言うと、冬四郎は仕方なさそうに財布を取り出して、中身を確認して苦い顔をした。
「…レシート持って来てくれ」
手持ちがなかったのか、ははっと笑って誤魔化すと財布をポケットに突っ込んだ。