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6話
冬四郎は心配そうに、病室を出入りする看護師を見ていた。西原と京井も今は何も聞かずに、ただ落ち着くのを待っている。むつの点滴をしてくれた看護師が、冬四郎の前を通りすぎ、またすぐに戻ってきた。
「ずいぶんと、まぁ…痴話喧嘩みたいな傷ね」
冬四郎の顔を見て、看護師はくすくす笑うと持ってきた消毒綿で血を拭い大きめの絆創膏をぺたりと貼った。
「もう少しで終わるから、そしたら側に居てあげてくださいね。しばらく、起きないと思いますけど」
「あ、はい…何から何まですみません。ありがとうございます」
礼を言うと、看護師はにっこりと微笑んでまたすぐに病室に戻っていった。冬四郎はその姿を見送り、張られた絆創膏を撫でた。
「これ…大袈裟じゃないか?」
眉間にシワを寄せて冬四郎が言うと、西原がぷっと吹き出すようにして笑った。
「何かもう、ザ喧嘩の後って感じですね」
「うるさい」
ふて腐れたように冬四郎は言うと、むすっとした顔のまま黙って処置が終わるのを待っていた。