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6話
むつの大声を聞き付け、ドアの前に警護として立っていた警官と京井、西原がばたばたと続けて入ってきた。
「どうしましたっ!?」
警官の声に、びくんっと肩を揺らしたむつは冬四郎が差し出そうとしていたペットボトルをばしっと手で叩いて、壁に叩き付けた。ばしゃっとベッドにも水が溢れ、冬四郎は驚いたように手元を見ると、ペットボトルの半分ほどが切られたようになくなっていた。むつが再び、手を振り上げようとすると冬四郎がその手首を掴んで、京井の方を見た。
「…っ!!錯乱してるみたいだ‼先生を‼」
床に転がった下半分のペットボトルを見て、京井が西原と警官を下がらせた。駆け寄った京井はナースコールを押した。
「むつ、落ち着け‼大丈夫だから!!」
食いしばった歯をぎちぎちと鳴らし、ふぅふぅと呼吸を荒げながらむつは冬四郎を睨んでいる。力では負けるはずのない冬四郎が、押され気味になっている。京井が割って入ろうかとしていたが、冬四郎は首を振って止めてくれと言った。