6話
翌朝、いつの間にか眠っていたのか冬四郎は、はっと目を覚ました。カーテンから差す光はまだ暗いが、室内を見渡すには十分だった。
「…むつ?」
ベッドは空っぽで、むつの姿はない。掛け布団もなくなっており、冬四郎は慌てて椅子から立とうとして動きを止めた。椅子に座り、足を組んで寝ていた冬四郎の足に寄り掛かるようにして、白い布団がこんもりとしている。
冬四郎がそうっと布団をかきわけるようにすると、冷たい床に座り足に寄り掛かっているむつが居た。いつの間に、下に下りたのか冬四郎は全く気付かなかった。布団にくるまったまま、むつをそっと抱き上げて冬四郎がベッドに戻すと、むつは目を覚ました。
「あ、悪い…起こしたか?」
「お、みず…」
水を欲しがってるのだと分かると、冬四郎はサイドボードの置いてあるペットボトルを取り、蓋を開けてむつに差し出した。
「………」
「え?」
布団に丸まったまま聞き取れない声で、むつがぶつぶつと何かを言っている。聞き取ろうと冬四郎が顔は、近付けてみると、両目をかっと見開いてむつは同じ事を何度も言っていた。
「むつ?おい、むつっ‼」
「いや…いや、いや、もう…いやーーっ‼」