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6話
西原と京井は隣の空き部屋のベッドを借りる事にしたが、冬四郎はむつのベッドの脇の椅子に座ったままだった。
寝返りをうつたびに、むつはうっすらと目を開けては少し顔を持ち上げて、冬四郎の顔を見ていた。冬四郎はそのたびに、むつの頭を撫でたりしてしていた。そうするとむつは安心したように、また眠りについた。
冬四郎はむつが身動ぎをして掛け布団がずれると、きちんの肩が隠れるくらいまで持ち上げてやっている。冬四郎は薄暗い明かりの中で、むつの寝顔を見てはいたが、穏やかな表情とは程遠い。
むつは横向きになろうと、仰向けになろうと、常に両手首を揃えるようにしてくっつけた状態にしていた。むつの遺体の幻覚を視せていた狢が、手枷をつけられて監禁されていたと言っていたが、そのくせが抜けないように、手首を揃えているむつを見ているのは痛々しかった。
「…っん…おにぃ…」
もぞもぞとむつが起き、冬四郎の方を向いた。
「どうした?」
「う、ん」
むつが両手を伸ばすと、冬四郎はよく分からないまま手を差し出した。むつはその手を取ると、またすぐに目を閉じた。