6話
流石に冬四郎は何とも言えずに、西原と京井の方を振り返った。西原もすぐには何とも反応出来ずにいたが、京井だけはそうでもなかった。冬四郎の横に移動した京井は、布団を持ち上げてむつの肩にかけた。
「ちょっと混乱してるだけですよ。大丈夫、すぐに分かるようになりますから、ね?」
むつは、ちらっと京井の方を見た。
「自分の名前は、分かるんですよね?それに…宮前さんが居ると安心も出来るんでしょう?」
少し首を傾げたむつは、ゆっくり冬四郎から離れると京井を見た。
「宮前…名字、一緒…?」
「一緒ですね。むぅちゃんのお兄さんなんですから。さっき、お水を渡してくれたのは西原さん、私は京井です」
京井はにこやかに、名乗った。むつは、京井から西原に視線を向けて、最後に冬四郎を見上げた。
「…お兄さん…?居たっけ?」
「…居るんだよ。残念かもしれないけどな、お前には、4人の兄貴が居るんだよ」
冬四郎が言うと、むつは目を見開いた。4人も居ると聞かされて、驚きを隠せない様子だった。
「お兄さん…西原、さん…京井さん」
3人の顔を確認しながら、むつは忘れないようにするように、名前を呟いていった。