6話
何やら、もじもじとしているむつの様子が気がかりなのは、冬四郎だけではなかった。西原も京井もむつの様子がおかしい事には気付いていたが、どうする事も出来ずに、見ているしかなかった。
むつは少し顔を上げては、ちらっと冬四郎を見て目が合うとすぐにまた目を伏せてをしている。困った冬四郎が立ち上がろうとすると、むつは不安そうに視線をさ迷わせていた。それを見逃さなかった冬四郎は、身を乗り出した。びっくりしたむつが身を引こうとしたが、冬四郎は構わずに手を頭の後ろに回した。引き寄せて、むつの額に自分の額をこつんっと当てた。
「どうしたよ?しろにぃに何でも話してごらん?」
ぐりぐりと額を押し付けながら、冬四郎は笑みを浮かべていた。むつは少し首を傾げたが、くすぐったそうに少しだけ笑った。だが、すぐに笑みも消してしまった。冬四郎は笑みを絶やさずに、むつの目を見るようにしている。そして、頭の後ろにやっていた手を放すと相変わらず、ぎゅっとペットボトルを握っている手の上に重ねた。
ひんやりと冷たいむつの手だったが、ゆっくりと暖かくなってきていた。そして、ペットボトルから手を放して冬四郎の小指に指を絡めるようにしてきた。冬四郎は手のひらを広げると、むつの手を包み込んだ。