1話
冬四郎にと京井が取り分けた分は、西原がにょろりとした細長い狐。管狐とわけあって食べている。京井は新しい紙皿を出すと、そこに新たに取り分けた。そして冬四郎の前に置いた。
「食べてくださいよ」
「いただきます」
食欲のない冬四郎はそれでも、箸を持つと卵焼きを口に運んだ。それを見て、山上がくっと笑った。もそもそと卵焼きを噛んだ冬四郎は、複雑な表情で京井を見た。
「わたしはむっちゃんの好みしか知りませんから。卵焼きは砂糖を入れて、甘くしてますよ」
「俺も甘い卵焼き好きですよ。なぁ?」
西原は管狐と一緒に、卵焼きを頬張っている。山上と片車輪は好きも嫌いも言わずに、黙々と箸を動かしていた。
「ところで、山上さん。そちらの方は?」
食事を終えて片付けをしながら、西原が髭面の男をちらっと見た。篠田も気になっていたようだ。
「お前ら前に会ってるだろ?片車輪だよ」
そう言われた2人は、目を丸くしている。そして、まじまじと片車輪の顔を見ている。何となく居ずらいのか、片車輪はむすっとしている。だが、昨日の夕方から帰りたいとも言わず、大人しく居るし、山上の言う事を聞いている。




