6話
腕を組み、1人で色々と考えを巡らせていると隣に座っていた京井が、つんっとジャケットの裾を引っ張った。意外と子供っぽい事するなと思いながら、冬四郎は京井の方に視線を向けた。
「起きたみたいです」
何を言っているのか分からなかったが、京井が指差す方を見ると、ベッドの上のむつがうっすらと目を開けていた。寝惚けているのか、眉間にシワを寄せながら目を閉じると、うーんとうなりなから寝返りを打とうとしたが、点滴が邪魔になったのか抜こうとしていた。
「お、おいおい」
冬四郎が手を取り、止めさせたがすでに針は抜かれてしまっていた。ぷらぷらと管から垂れ下がっている針の先から、透明な液体が床に落ちていく。京井がナースコールを押し、針を拾って点滴台にかけた。
「むつ、大丈夫か?」
寝返りを打ち、うつ伏せになったむつは声のした方に顔を向けたが、目は半分ほどしか開いていない。だが、それでもこくりと頷いた。半開きだった目をゆっくりと開け、むつは冬四郎の顔を見ている。
「…どこ?」
かすれた小さな声だった。
「病院だ、何があったか覚えてるか?」
言われた意味がすぐに理解出来ないのか、むつは枕に顔を押し付けて下を向いてしまった。だが、すぐに顔をあげ起き上がってベッドの上に座った。