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6話
「西原さんだけじゃ…あれですね」
「心配だな。色々と」
「京井さんまで失礼な…3人泊まるで、伝えてきますね」
西原はそう言い、部屋から出ていった。
「本当に、むつですか?」
「本当に、むぅちゃんですよ。信じられそうにないですか?」
「えぇ…いや、信じられないよりも…相手が何を仕掛けるつもりなのか、さっぱり見当つかずで怖いです」
冬四郎はむつに視線を向けたままで、京井に言った。らしくもないが、本音だった。
今までは、どこで何をされているのかも分からない不安があった。だが、今は目の前に居る事が不安になっていた。死んだように見せ掛けたり、偽者を送り込んだりしていた敵が、易々とむつを手放すとは思えない。敵は、むつも日本刀も手に入れたがっていると、リンに呼ばれていると言っていた仮面の男も話していた。それなのに、こうも簡単にむつが逃げ切った事が気になって仕方なかった。冬四郎は、敵がわざとむつを逃がしたのではないかと、そう考えていた。