6話
「ったく…最低の弟だ」
晃はそう言ったが、大して怒っている様子はない。眠っているむつの頬をそっと撫で、優しげに微笑んだ。
「最低の兄貴だよな。なぁ、むつ…」
そう話かけると、晃は帰ると言ってさっさと背中を向けて出ていった。それを見送った冬四郎は、腑に落ちないといった表情をしている。
「警視正…変ですね」
「変だな。泣いて喜ぶかと思ったし、ずっと付きっきりで居るとか言い出すかと思ったけど」
「すんなり、帰りましたね。ん?戻るって言ってましたけど、家に帰るんじゃないって事なんでしょうか?」
「さぁな。あの人の考えは分からん」
冬四郎は晃に大してさほど、興味がないのがありありと分かる態度だった。
「それにしても…まさか、むつ本人が出てくるとは思いませんでしたよ」
「俺もだ。日本刀もまだこっちにあるというのに…やつらが諦めたわけじゃないと思うが」
「そうですね。ま、むつが目覚めたら、色々と分かる事もあると思いますし…今はゆっくり眠らせておくのが良いと思いますよ」
「そうだな。それで、この部屋の警備は?」
「外に立ってるのが1人だけです…病院側に言って、今夜は泊まりますか?俺は、そのつもりでいますけど」




