6話
喜んでいた晃だったが、すっと目を細めるようにして険しい表情を浮かべた。
「西原君、むつの目が覚めて移動が可能だと判断されたら、藤原さんの所で入院させるように手配してくれ。それから、偽物の遺体はいったい誰なんだ?」
「それは…その、むつ、さんが人形を使うような感じで、あの遺体はただの人形でした」
「そうか…犯人逮捕は難しいだろうな。冬四郎、お前他にも何か隠してる事があるんじゃないか?」
「有りますよ。犯人の目的とか」
「…片が尽き次第、報告しろ。俺は1度戻る」
何をしに行くのか、晃は立ち上がった。それを見て、何か気に入らない事でもあったのか、冬四郎も立ち上がると晃に手を伸ばした。そして頬をつまむと、遠慮なしにぐいぐいと引っ張った。
「いでででで‼ってめぇ…」
晃がその手を払いのけ、冬四郎の頭を叩こうとしたが、難なく避けられてしまった。なぜ、急に頬を引っ張られたのか分からない晃は、赤くなった頬を痛そうに擦っていた。
「本物ですね」
謝りもせずに冬四郎が言うと、晃はぎょろっと睨み付けた。西原と京井は冬四郎が何の為に、そうしたのかを分かっているだけに、笑いを堪えたような顔をして居た。