6話
「むつは生きてます。死体は偽物です。むつを誘拐したやつらが作ったものです。分かりましたか?」
「…あ、あぁ」
冬四郎がぶっきらぼうに淡々と話すと、晃はこくこくと頷いた。冬四郎の何となく不機嫌そうな声に、晃が少し押され気味だった。
「で、検査とかは?」
「一通りざっくりとはしてるみたいです。結果はまだ、出てませんが…川の水飲んでる可能性が高かったので、胃の洗浄はしたみたいです。病院に着いてから、1度目を覚まして自分で名前を言ったそうで。だから、通報があったんです。あと、確実に分かってるのは胃は空っぽだったみたいです…健康状態は見ての通り、良くはありませんね」
「とりあえず…良かったのか?」
晃が首を傾げていた。妹がこうして、生きて目の前に居るにも関わらず、あまり実感がないようだ。だが、戻ってきたからには喜ばしい事のはずだった。
「そうですね。あとは少しずつ、回復していってくれればと思いますよ」
西原は、ほっとしたような笑みを晃に向けた。晃もそんな西原の顔を見て、安心したように頷いてはいた。だが、冬四郎と京井はそんな簡単には喜べないようで、険しい表情のままだった。