6話
「西原君、むつがここに運ばれた経緯は分かっているのか?」
「えぇ…あ、どうぞ」
冬四郎は目の前に居るのが、本物の妹であると信じられないようだった。西原もその気持ちを察しているのか、ゆっくり話しましょうと、立っている3人に椅子を進めた。3人が座わると西原は、壁に寄り掛かかった。
「経緯ですが…深夜、道路に倒れていたのを発見され搬送されました。場所は川沿いの道で、土手から這い上がってきた所で力尽きた感じだったそうで、発見時はずぶ濡れになっていましたが、意識はあったそうです。搬送されている間に、眠ってしまったようです。衣服…といっても白いノースリーブのワンピース1枚で他には何も身に着けてはなかったそうです。下着にしろ、靴にしろ何もなかったとの事です」
「意識があったのか?」
意外そうに冬四郎が聞き返すと、西原はこくりと頷いた。
「救急隊員と通報者の話では、ですけど」
「…自力で逃げてきたという事でしょうか」
「…ちょ、ちょっと待ってくれ。むつは、生きてるんだな?」
あまり状況が飲み込めないままの晃が、軽く挙手をした。警察署が襲撃された時も西原は結局、何も説明をしないままだったのもあり、晃1人だけが何も分かっていない状況だった。