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6話
「………」
ベッドの前に並んだ、冬四郎と晃は何も言えずにじっと見ていた。見た目は、見慣れているむつの姿だった。だが、偽者を何度も見ている冬四郎には、これが自分の妹であったか、分からなくなっていた。
「むぅちゃん、ですね」
たまりかねたのか、後ろに居た京井が冬四郎の耳元で囁くように言うと、冬四郎は目を見開いて京井の方を見た。何度も瞬きをして、信じられないという顔をしている。
「むつ、なのか?本当に…?なら、死体は?」
京井の声が聞こえたのか、晃が半信半疑という顔をしている。晃も警察署が襲撃された時に、覆面の下のむつの顔を見ていた。だが、それは見間違いでしかないのだと自分に言い聞かせていた。晃はどういう事なのかと、冬四郎に視線を向けたが、冬四郎はそれに気付かずに、ベッドに横たわっているむつを見ていた。
1週間でこんなにも痩せ、不健康そのものにしか見えない。青白い顔には、生気がない。生きているようには見えない。