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6話
西原から場所を聞いた冬四郎は、静かに受話器を置いた。京井はすでにパソコンを畳んで、ジャケットを羽織っていた。
「どういう事なんでしょうね」
「分かりません…これが、次の手ってやつなのかもしれませんね」
冬四郎がジャケットを羽織っている間に、京井は倉庫から4本の模造刀と1本の本物の日本刀を持ってきていた。戸締まりをし、鍵を掴むと冬四郎と京井はよろず屋の事務所から出ていった。
車の運転席に乗った冬四郎は、ふぅっと息を漏らした。じっとりと手汗をかいており、ハンドルが滑りそうだった。
「運転、変わりましょうか?」
「や、大丈夫です。大丈夫ですけど…」
「病院に搬送って言ってましたよね?西原さん。偽物なら、わざわざ病院に行く事ない気もしますが」
「えぇ…何かあったって事ですよね」
「宮前さんは、本人だと思ってますね」
「思いたいです。1人で、搬送されたって事なら…もしかして、自ら逃げ出してきたのかなと思ってます。と、いうより思いたいです」
「…それは、見れば分かりますよ」
冷静に京井が言うと、冬四郎は頷くだけだった。