1話
それに気付いたのか、京井が冬四郎の紙皿を持つと、ひょいひょいと皿に料理を取っていく。
「召し上がってください。顔色も優れない様子ですし…それだと何も出来そうにないですね」
にやりと京井が嫌な笑い方をした。足手まといになるなら、帰れと言わんばかりの言い方に、冬四郎もかちんっと来たのだろう。ぎろっと京井を睨んだ。
そんな2人の静かな睨み合いを何とも思わないのか、欠伸を噛み殺しながら西原は冬四郎の紙皿と自分の分を交換した。それを見て、篠田が吹き出すようにして笑った。
「ふぁーっ眠っ。当直開けなんで、腹も減ってたんでまじで助かります」
何故、呼び出されたのか分かっているはずの西原だったが、そんな事を言いながら箸を動かしている。口では軽い事を言っているが、目は笑っていない。冬四郎を睨むような目付きだった。
「心配で寝れず、飯食えずじゃ本当にろくに動けなくなりますよ?宮前さんがそんなんじゃ困りますよ。なぁ?」
西原は誰に同意を求めたのか、足の上に視線を向けていた。颯介だけが、すぐにあっと声を上げた。西原の足の上から、そろっと顔を出した細長い顔の生き物が、ひくひくと鼻を動かしている。西原が卵焼きを箸で切って、顔の前に持っていくとそれにかぷっと噛み付いた。
「すみません…」
「いやいや、面白いっすね。蛇みたいなのに、顔は狐ですもんね」




