6話
カタカタとキーボードを叩いて京井は仕事を、冬四郎は奥のスペースで軽く身体を動かしている。京井を見習い、昇進試験の勉強でもする方が良いのかもしれないが、身体を動かしている方が余計な事を考えずに済む。
軽く汗をかくまで筋トレをし、冬四郎はゆっくりとストレッチをした。少し乱れた呼吸を整えていると、事務所の電話がけたたましく鳴り始めた。
「はい、よろず屋です」
机で仕事をしていた京井がすぐに、当たり前のように出た。その自然さに冬四郎は少し笑ってしまっていた。
「えぇ、居ますよ。代わりますね。宮前さん、西原さんからお電話ですよ」
「あ…はい」
何でわざわざ事務所の電話なのかと冬四郎は首を傾げたが、京井から受話器を受け取り耳に当てた。
「もしもし?」
『何で携帯出ないんすか‼』
「えーっと?あ、うん。筋トレしてて気付かなかった。悪い、どうした?」
椅子にかけてあるジャケットのポケットから携帯を取り出すと、2件の着信履歴があり、どれもが西原からだった。
『むつが発見されました』
「はぁ!?」
『いや、気分は分かります。俺もはぁ!?ってなりましたから。とりあえず、救急搬送されたみたいなんで行くんですけど…どうします?』
「すぐに行く。場所は?」