6話
「良い事ですよ。コーヒーおかわりしますか?」
「いえ、大丈夫です」
片付けを終えて戻ってきた京井は、机にノートパソコンを置くと眼鏡をかけた。
「目、悪いんですか?」
「ブルーライトカット用です。仕事でパソコン触る時にはかけるようにしてるんですよ…昔はこんなの無かったので、目の心配とかなかったんですけど」
そう言って笑った京井は、慣れた手付きでカタカタとキーボードを打っていく。昼間に自分の会社に戻り仕事をし、夜はよろず屋に詰めてと京井は忙しくしているにも関わらず、冬四郎のように疲れた顔はしていない。スーツもシャツもシワも1つもなく、常に清潔感に溢れている。
「どうかなさいましたか?」
そんな常に、きちんとしている京井を感心しながら見ていた冬四郎は、苦笑いを浮かべて何でもないと首を振った。
「凄いなーと思ったんですよ。疲れも痛みも顔に出ないんですね」
「…そうですか?それでも疲れも痛みも感じますよ。片車輪に傷口を焼いて貰ったのは、本当に痛かったですし。病院行けば良かったかなとか思いましたよ」
パソコン画面から目を離さずに、キーボードを打ちながら京井が、ふふっと笑っていた。